本質を捉えることの話

長いので収納します。
こういう命題があります。

fをR上の凸関数とする(開区間でもいい)。すなわち任意のx,y∈Rとt∈[0,1]に対して、f(tx+(1-t)y)≦tf(x)+(1-t)f(y)がなりたつとする。このとき、fは連続である。

これをはじめに見たとき、凸性の定義を適当に使えばできるだろうと思って、次のような証明をつけました。

[証明1]fが0で連続であることを示せば十分である。平行移動により、f(0)=0としてよい。
0


で、つい最近までこの証明で満足していたのですが、最近もっとよい方法があることに気づきました。

[証明2]x∈Rをひとつ固定して、次の関数を考える。
h(t)=\frac{f(t)-f(x)}{t-x}
これはt≠xで定義された単調増加関数である(これは凸性からすぐに示すことができる。y=f(x)のグラフを描いてhを二点の傾きだと思えば直感的にもわかる)。したがって、あるM>0が存在して、xのある近傍上で、
\left|\frac{f(t)-f(x)}{t-x}\right|\leq M
がなりたつ。よって、この近傍上で、

f(t)-f(x) ≦(t-x)M

となるから、fはxで連続である。(おわり)


これは結局、「傾きをあらわす関数hがx,tの両方について単調増加である」という凸性の特徴づけを用いて、fが局所リプシッツ連続であることを導いているわけです。やっていることは実は1も2も同じなのですが、こちらのほうが「どの性質からどの性質が導かれたのか」ということがはっきりしているし、人に話すときも伝わりやすいと思います。
ということで、ある命題がなりたつ根本の理由が捉えられる証明を考えるのが大事だなぁと思った次第です。